有識者の声
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「ストレスチェック義務化の具体的な対応方法」前編

 労働者の権利意識が高まり、企業は今、さまざまな場面で、変容を求められている。そのような中、労働安全衛生法の改正により、50名以上の事業所で実施義務となった従業員のストレスチェック。皆さんの会社では、もう準備は整っているだろうか?

 そもそも、この法律ができた背景には、長時間労働や職場での重圧などによる労働者の精神的不調が増加してきたため、未然防止の一環として、国が企業に、労働者の心の健康度合を測ることを求めた、というものだ。従って、企業は規程を整え、対象者すべてにチェックを受けてもらう義務がある。
 メンタルヘルス対策を考える時、ぜひ知っておいていただきたいのが業務の全体像である。図の左側には社内ルール、右側には社員向けの施策が配置されている。今回のテーマである「従業員のストレスチェック」は図の右側、予防策にあたる。

社内ルールを整備/従業員向け予防策

 メンタル不調防止策のステップとして、自分で自分の心のケアができるようになるセルフケア、上司が部下のケアを行うラインケア等が挙げられるが、ストレスチェック義務化制度は、セルフケアの一環として考えられている。他の病気と同じで、精神疾患も早期発見、早期受診によって重症化を防ぐことができ、その第一歩が自分で行うストレスチェックである。

 さて、企業が取り組むにあたってはさまざまな課題があるが、多くの企業から聞かれるのが、対象者すべてに受検してもらう難しさである。何の説明もなく、いきなりテストを突き付けて強制するようなことは、いくら法的義務とはいえ従業員の不審感を招く可能性もあるので慎みたい。また、本社・工場・各地の営業所・販売店などに点在している従業員たちすべてに用紙を配布し、チェックしたものをまた郵送で返してもらう、という作業は、情報セキュリティ上も問題があるし、人数の限られた人事・総務部門の大きな負担となる。今回の法律では、情報の取り扱いが厳しく規制されており、より注意が必要である。また、そのための規程づくりにも義務が及ぶ。

 次に課題としてあげられるのは、結果の利用方法である。多くの受検者がいれば、高ストレス者の抽出や、部門ごとの集計に手間がかかる。部門ごとの集計は義務ではないものの、多くの企業が取り組むことが予想される。ストレスチェックの結果を知って、自らの管理を心掛けても、生活時間のほとんどを費やす職場の環境が悪ければ、心の健康は保つことができないからだ。そのような観点から、企業も、個人のスコアと同等に、組織のスコアも大切に考える必要性にはうなずける。

 さらに、結果を見た本人がどう行動するかも非常に大切である。企業は、安全配慮義務の一環として、受検を促すとともに、結果の利用法についても説明する必要がある。高ストレス者が発生した場合、本人が働き方や考え方を見直すことはもとより、専門家に相談することも重要であるが、今回の法律では、医師の面接を受けるかどうかは任意である。また、高ストレス者の多くは進んで手を挙げない可能性も指摘されている。これは、手を挙げた時点で、企業側にストレスチェックの結果が開示される仕組みのためだ。従って、企業側では、まったく外部の相談窓口をあらかじめ設置しておくことも検討する必要がある。

以上のような課題の解決策を、後編では語っていきたい。

著者紹介

根岸勢津子

根岸勢津子

  • Setsuko Negishi
  • 株式会社プラネット代表取締役
  • 企業防衛の視点に立ったメンタルヘルス対策の専門家。社内規程づくりから、教育研修にわたり幅広い領域のコンサルティングを展開。クライアント企業は、IT業、介護福祉業、物流業、小売業、外食チェーンなど、上場企業70社を含む100社を超える。


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